昨年の秋に訪れたアラスカで、ついにその目的となるオーロラを目の当たりにした。
満天の星空の下の方に、うっすらと輝きだした柔らかい光。
まるで、遠くのたき火の煙が、ゆっくりとただよっているようだ。
その光は、少しずつ広がりを見せ、輝きを増した。
そして、巨大な光の柱となり天空に登りつめる。
消えては現れるオーロラだが、その姿は様々で、まるでカーテンが風でなびくような姿もあり、その光景はこの世界とは違う空間に存在しているような錯覚に落ちる。
オーロラの名前は、ローマ神話の暁の女神「アウロラ」に由来する。
北、南の天体における極域で見られる大気の発光現象であるが、その仕組みは、まだはっきりと解明されていない。
現在、一般的な見解としては、太陽からやってくる太陽風と呼ばれるプラズマが地球に吹きつけ、これと地球の磁場が関係してオーロラが発生すると考えられている。
謎が多いオーロラだが、その不思議な現象は遥か昔から、各地で伝説として語り継がれている。
調べてみて意外だったが、オーロラの出現を不吉の前兆と受け取る見る話しが多い。
今回見たオーロラは、ほとんど緑であったが、赤いオーロラが観測される場所、例えばオーストラリアやニュージーランドでは、赤い色が血や死を連想させるらしく不吉とされ、また火の連想もあり、森林火災なども彷彿させるようだ。
またエスキモーに伝わる伝説は、死後の世界に関係するものが多い。
各地様々だが、魂を奪われるなど物騒な話しがを多い。
人知を超えたその存在に、言いようのない恐怖を感じたのであろう。
私も、いままでたくさんの光景を見てきたが、オーロラは別格であり、美しく深い感動を感じもしたが、それと同じくらいの恐ろしさも感じた。
オーロラは、人間がもっとも神や精霊を感じる現象なのかもしれない。